トヨタ燃料電池車(FCV)市販決定 でも水素の価格は?
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トヨタ自動車が、年度内に燃料電池車(FCV=Fuel Cell Vehicle)を市販すると発表しました。
価格は700万円程度、国からの補助金は200〜300万円になる見込みです。
※2014.11.14追記:12月に発売予定の「MIRAI(ミライ)」の補助金は202万円と決まりました。車両価格は約720万円ですので、実質負担は約520万円となります。
さらに約23万円の減税等が適用されます。
価格の高さや、水素ステーションの少なさ等、普及にはまだネックがありますが、そもそも燃料の水素の値段はいくらなのでしょうか?
ガソリン車と比較してみました。
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トヨタFCV・燃料電池車のMIRAI発表会で分かったこと
ハイブリッド車を買わない理由
私はハイブリッド車(HV)に魅力を感じていません。
理由は3つ。
・1台の車に電気自動車の部品(モーター,バッテリー,制御装置)と、ガソリンエンジンの部品(エンジン,燃料供給部品,ラジエター,排気管,ガソリンタンク,ミッション)、そしてモーターとエンジンの切り替えの制御装置を搭載するのはムダ。
コストも、車重も、故障確率も2系統分になる。
・バッテリーの寿命はせいぜい5年なので、5年でバッテリー交換か、クルマの買い替えの費用が掛かる。
・私は高速道路がほとんどなので、電池だけの走行が少なく、燃費メリットが少ない。
それに対して電気自動車は、燃費(電気代)がガソリン車の1/10〜2/10、部品点数も1/10なのは魅力的です。
しかし、航続距離が200kmにも満たないので、「通勤や買い物でしか使わない」ユーザー以外は、急速充電器の場所をマッピングして走行プランを立てなければならず、誰かが充電してたら待たなければなりません。
そんなめんどくささを楽しみたいMの人や、目的地に何時に着いても構わない人以外には、実用に耐えません。
現実的にはHV車並の燃費のクリーンディーゼル車が一番エコだと思いますが、充電が不要なFCV(燃料電池車)の普及を楽しみにしています。
驚きの低価格を実現したFCV
冒頭でFCVの価格が高いと書きましたが、小泉内閣の頃にリースで納入された時には、確か1億円と言ってましたので、今回の価格を聞いて「安っ!」と驚きました。消費税以下です
トヨタは、プリウス発売時にも出血価格でリリースし一気に普及させましたので、今回もトヨタだからできる価格なのかもしれません。
トヨタでは「環境に高い意識を持つ一般の方や法人に、手が届く価格になった」と語っています。
↓燃料電池車(ホンダ)の市街地走行インプレッション
そもそも燃料電池とは?
燃料電池とは、水素と酸素を供給して発電するシステムです。
水の電気分解と逆の原理ですね。
ですから、排出するのは水(水蒸気)だけという、究極のクリーンシステムです。
水素を精製するには電気を使いますので、完全なゼロ・エミッションではありませんが。
FCVに搭載するのは燃料電池+水素タンク+モーターです。
今回のFCVは、1回の水素充填での航続距離は700km以上だそうで、充分な距離ですね。
(ガソリン車と同様、走り方やエアコンなどの電装品の使用頻度によって異なります)
しかもガソリン代が掛からない!
いや、ちょっと待てよ。
水素っていくらなの?
まさか、ガソリンより高いってことは?
水素の価格とFCVの燃費
水素ステーションでのFCVへの販売価格は、現在のところ、1m3(立米)で110~150円のようです。
これを今回のFCVに当てはめてみましょう。
水素タンク圧力は70Mpa(約700気圧)。
タンク容量は発表されていませんが、トヨタが過去に発表したFCV試作車のスペックは70Mpa,156L(リットル)になっていますから、それと同じとして計算します。
※11月18日に発表されたトヨタMIRAIのスペックに基づいて、数字を修正しました。
タンク容量は122.4L(リットル)でした。
すなわち、1気圧(大気圧)で122.4Lの水素が入るタンクということです。
このタンクは700気圧の圧力まで耐えるので、
122.4L x 700気圧 = 85,540L の水素が入ります。
1,000Lは1m3なので、85,680Lは85.68m3(立米)です・・・タンクに入る水素総量
航続距離はJC08モードで650kmなので、
650km ÷ 85.68m3 = 7.59km/m3・・・水素1m3当たりの走行距離
1m3の値段が110~150円なので
110~150円 ÷ 7.59km ≒14.5~19.8円/km・・・1km当たりの水素代
FCVよりガソリン車の方が燃費がいい?
ガソリン車の場合と比べてみましょう。
ガソリン車の燃費を10〜15km/L、ガソリン価格を160円とすると、
160円 ÷ 10〜15km ≒ 10.7〜16円/km・・・1km当たりのガソリン代
あれ〜? 水素の方が高いぃ? 水から作るのに
水素の値段が1m3、100円になると13.1円/kmですから、ガソリン車並の燃料費となるのでしょうが。
ガソリン車と比べて5〜7割程高くて、燃費が高いなら、「環境にメチャクチャ高い意識を持つ一般の方や法人」じゃないと、買う気にならないですね。
そもそも700万円のクルマは買えませんが
さらに、上記の水素価格には、揮発油税のような税金や、これから大量に設置しなければならない水素ステーションの建設コストは転嫁されていませんから、販売コストは、もっと高くなる可能性があります。
ただし、経済産業省資源エネルギー庁は、「2030年を目安に1m3あたり40円」を目指すと発表していますから、将来的には国の施策で1/3程度の価格になるかもしれません。
※2014.12.26追記
イワタニと日石が水素の価格を下げましたので、計算し直しました。下記記事をご参照ください。
燃料電池車トヨタMIRAI 水素の燃費はいくらになる?
高額な建設費の水素ステーション
水素を充填できる「水素ステーション」は、計画中を含めてまだ全国に30ヶ所程度で、全く足りません。
電気自動車の充電器のように、販売ディーラーやショッピングモールの駐車場に設置できるかというと、まずムリでしょう。
急速充電器の設置費用は1基あたり約200〜300万円ですが、水素ステーションは1ヶ所約3億〜5億円掛かります。
ガソリンスタンドは1億円程度なので、それと比べても破格の費用が掛かります。
国が最大半額を補助しますが、それでも数億円の設備投資です。
モトを取るには、いったいどれだけの水素を売らないといけないか?
FCVの大幅な普及が見込めない限り、とても手を出せる商売ではありません。
加えて、水素は取り扱いに注意が必要な物質です。
自然発火はしませんが、空気中の水素濃度が4%以上になると、静電気程度で爆発的に燃焼しますから、室内に水素が漏れると、極めて危険な状態になります。
ボンベの色も赤で、いかにも危険そうですし。
福島原発の建屋を粉々にしたのも、単に水素だけの爆発です。
放射性物質は関係していません。
もっと有名なのは、1937年のドイツ飛行船ヒンデンブルグ号爆発です。
ただし、水素の爆発の場合は淡い青色なので、当時のモノクロフィルムの性能では、その燃焼炎は写らないはずですから、他の原因説(船体外皮の酸化鉄とアルミニウム混合塗料の発火など)が有力です。
いずれにしても、ディーラーやショッピングモールが簡単に設置できるようなものではありません。
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Comment
燃料電池車にはもっと重大な誤解があるのでは。
経産省や自動車会社に下記のpdfファイルをメールしてあります。
技術的な説明が必要でしたら、遠慮なくご連絡ください。
http://wwr7.ucom.ne.jp/m-murai3/HP206.pdf
>>1
pdf見てみたけどミスリードな気がしますね
水素の生成方法は多岐にわたるから、石油メジャーに依存しないというのがメリットだったと思いますが
トヨタがここまでして燃料電池車の導入を押すのは、
経団連…そのなかの“石油業界”にイイ顔をしているようにしか思えません。
現状で水素は石油から精製されるようです。そこに電気エネルギーは必要で、その気体を運ぶためのインフラ整備に様々なエネルギーもお金も必要になります。
一方、電気自動車は電気をためて直接動きます。発電のインフラは既にあり、充電用インフラの整備は多少ですが程度進んでいます。
さて、同じ距離を走るのによりエネルギーを消費するのはどちらなのでしょう?
電気自動車は“石油”→“電気”→“動力”
燃料電池車は“石油”→“水素”→“電気”→“動力”
電気自動車は直接電気を取り入れるので、燃料電池車は水素を生成するぶんのエネルギーが明らかに無駄な気がしますがどうなのでしょう。
石油から直接電気を作るより、石油から一度水素にして、そこから電気を作るほうが二度手間で明らかなエネルギーロスが生まれそうです…
クルマ業界と石油業界は切っても切れない間柄。
いきなり電気自動車に移行すると石油業界が困るから徐々に移行していきましょう……というのが今の流れのような気がしますね。
今は、まだ水素の値段が高すぎますね~
現在はガソリン車でも、実質燃費リッター15k~20kの車は多い!
それらを考えると、水素は割高!
燃費も1980年代のガソリン車と同じくらい!
これでは、あまり意味が無い!
水素の値段が1m3で、33円ぐらいでないとメリットが無い。