「とんでもございません」は気になる? 国語に関する世論調査
公開日:
生活・文化
24日、文化庁が「 平成25年度・国語に関する世論調査」を公表しました。
その中の、敬語・言葉遣い・慣用句についての調査は、自分の認識違いを気付かせてくれることがあります。
その主な設問を紹介し、分かりやすく解説します。
文化庁「国語に関する世論調査」とは?
「国語に関する世論調査」は、文化庁が毎年行なってる調査で、今年は3月に全国の16歳以上の男女3,437人を対象に行なわれ、その内の58.4%2,028人の有効回答が得られました。
9月24日に公表された報告は、それを集計・分析したもので、次の5つの項目に分かれています。
① 人とのコミュニケーションについて
② 読書について
③ 敬語について
④ 言葉遣いについて
⑤ 慣用句等の言い方について
その内の③〜⑤は、自分の認識違いを気付かせてくれることがあり、面白い内容です。
次項で③〜⑤の主な設問を紹介し、分かりやすく解説します。
③敬語について
敬語に関する7つの例文について、気になるか、気にならないかを質問しています。
各例文の数値は「気になる」と答えた人の%です。
数値が高い程、聞いて違和感を覚える人が多いということですね。
例文 | 気になる(%) | |
---|---|---|
(1) | 先生、こちらでお待ちしてください | 72.6 |
(2) | お客様が申されました | 63.1 |
(3) | とんでもございません | 25.0 |
(4) | お客様がお見えになった | 38.2 |
(5) | 3時に御出発される予定です | 40.1 |
(6) | 先生がおっしゃられたように | 28.1 |
(7) | お客様、どうぞいただいてください | 74.7 |
以前の調査と比べ、ほとんどの例文で気になる人が増加していますので、「正しい言葉遣い」に対する意識が向上しているようです。
皆さんは、どうでしたか?
「③敬語について」の解説
前述の7つの例文についての解説です。
なお、文中の謙譲語Ⅰ、謙譲語Ⅱ、敬語の指針等については次項で解説しています。
(1)「先生、こちらでお待ちしてください」
正しい言い方は「先生、こちらでお待ちになってください」
目上の人に対する尊敬語の表現ですが、「待つ」の尊敬語は「お待ちになる」です。
例題の「お待ちして(お待ちする)」はへりくだった言い方である謙譲語Ⅰですので、「先生、私はこちらでお待ちしております」といったように、自分が目上の人を待つ場合に使います。
(2)「お客様が申されました」
正しい言い方は「お客様がおっしゃいました」
「申す」は謙譲語Ⅱですので、「先程、私が申しましたように」といったように、自分がへりくだった表現に使います。
例題の「申され」はよく使われる言い方ですが、謙譲語Ⅱの「申す」に尊敬の助動詞「れる」を付けたものですので、誤った表現です。
(3)「とんでもございません」
正しい言い方は「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」
例題の「とんでもございません」もよく使われる言い方で、『敬語の指針』では、「相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現」として使うことは問題がないとされています。
しかし本来「とんでもない」はひとつの単語(形容詞)ですので、末尾の「ない」を「ございません」と言い換えるのは、例えば「とんでもある」といった言い方と同類の誤った言い方です。
(4)「お客様がお見えになった」
正しい言い方は「お客様が見えました」
「見える」は「来る」の尊敬語ですので、これだけで充分ですが、例題は「お…になる」を加えて二重敬語になっています。
ただし、これも『敬語の指針』では「習慣として定着している」とされる言い方です。
(5)「3時に御出発される予定です」
正しい言い方は「3時に御出発になる予定です」
「御〜する」は謙譲語Ⅰですので、「社長、私がご報告します」といった使い方をします
例題は、この「御〜する」に尊敬の助動詞「れる」を付けたものですので、誤った表現です。
また、「出発する」は、へりくだる相手が無い動詞なので、「ご出発する」という謙譲語は存在せず、完全に間違った言い方です。
(6)「先生がおっしゃられたように」
正しい言い方は「先生がおっしゃったように」
例題は「言う」の尊敬語「おっしゃる」に、尊敬の助動詞「れる」を付けた二重敬語です。
(7)「お客様、どうぞいただいてください」
正しい言い方は「お客様、どうぞ召し上がってください」
例題は」は「受け取る・もらう」の謙譲語Ⅰ「いただく」を尊敬語として使ってますので、完全な間違いです。
謙譲語Ⅰ、謙譲語Ⅱ、敬語の指針等について
謙譲語Ⅰ、謙譲語Ⅱや尊敬語についてご存知の方は、この項は飛ばして、次記事:「お会計の方」「千円からお預かりします」は気になる?をご覧下さい。
2007年2月の文化審議会答申「敬語の指針」では、それまで尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つに分けられていた敬語を、尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語の5つに分類しました。
尊敬語
相手を敬う時の表現。
謙譲語Ⅰ
自分がへりくだることで、相手を立てる表現。
謙譲語Ⅱ(丁重語)
相手に関係なく、自分の動作を丁重に言う場合の表現。
小社、拙著など、名詞の謙譲語Ⅱもあります。
謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの区別がややこしいですが、「行く」を例にしますと、
(1)謙譲語Ⅰ:「私がそちらへ伺います」
(2)謙譲語Ⅱ:「私は明日東京へ参ります」「部下が(妻が)(家族が)、東京へ参ります」
(1)は、自分より目上の人の家や会社に行く場合の表現
(2)は、自分または身内の者がどこかに行くことを、話している相手に対して丁重に言う場合の表現
というのが基本ですが、(1)のケースでは、「私がそちらに参ります」でも間違いではありません。
ただ、「伺います」の方が、相手を立てる意図がはっきりしていますので、より敬意のある表現と言えるでしょう。
尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱへの言い換え一覧
尊敬語 | 謙譲語Ⅰ | 謙譲語Ⅱ | |
---|---|---|---|
会う | お会いになる | お目にかかる・お会いする | |
あげる | おあげになる | 差し上げる | |
言う | おっしゃる | 申し上げる | 申す |
行く | いらっしゃる・おいでになる・お越しになる | 伺う・あがる | 参る |
居る | いらっしゃる・おいでになる | おる | |
思う | お思いになる・おぼしめす | 存じる | |
聞く | お聞きになる | 伺う・拝聴する | |
来る | いらっしゃる・おいでになる・お見えになる | 伺う・あがる | 参る |
知る | ご存知 | 存じ上げる | 存じる |
する | なさる | いたす | |
食べる | 召し上がる | いただく | |
問う | お尋ねになる・お問い合わせ | 伺う・お伺いする | |
見る | ご覧になる | 拝見する | |
もらう | おもらいになる | いただく・頂戴する |
次記事:「お会計の方」「千円からお預かりします」は気になる?へ続きます。
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