バリ島ダイバー生還の奇跡! ダイビングの基礎と用語の間違いを解説
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生活・文化
2014年2月にバリ島で起きた日本人ダイバー7人の漂流遭難事故。
3日後、奇跡的に5人が生還しました。
このようなダイビングのニュースの際、よく見受けられる用語の間違いとダイビングの基礎知識について解説します。
ダイバー5人救出の奇跡
バリ島でダイビング中に行方不明になった7人中5人が無事救出されました。
丸3日も経っていたのに生還したのは、素晴らしい奇跡だと思います。
私と息子もダイバーですので、7人もの大量遭難のニュースに関心を持ち、無事を祈っていました。
「5人救助」の速報テロップが流れた時には、夕食中でしたので、息子と2人で歓声を上げました。
岩場に漂着したのは事故の翌日とのことなので、最初の夜は漆黒の海を、海面に体に浸けながら漂流したことになります。
どれだけの恐怖と過酷な状況だったのか、想像するだけで、身がすくみます。
私だったら、その時点で心が折れ、助からなかったと思います。
客は看護師とのことですので、体調維持などの面で、一般人より知識と経験があったのでしょう。
さらに、客5人の内1人はインストラクター(後述)を持っており、他の4人も上級者だったようです。
多くの経験と体力、冷静で的確な判断、折れない心など、決して偶然ではなく、いくつもの本人達のスキルが積み重なって生まれた奇跡だと思います。
残る2人の無事を祈り、一時「無事を確認」とのニュースに喜びましたが、残念ながらお一人の方の死亡が確認されたようです。
2人は、他の5人と共に岩場に上がろうとした際、大波にさらわれたとのことです。
漂流で体力を消耗しきっていたのでしょう。
亡くなった方のご冥福と、残る1人の無事を祈ります。
ダイビングのライセンスとは?
このニュースを読み解く参考になる、スキューバ・ダイビング(以下ダイビング)の基礎知識を解説します。
よく『ダイビングの免許』という言い方をしますが、レジャーダイビングは許可制ではありませんから正確には『認定証』です。
ダイビング業界にはPADIやNAUIといった国際的な民間団体があり、それらに加盟したダイビングショップの講習(実技&学科)で合格すれば、Cカード(Certification Card=認定証)が発行されます。
Cカードには等級があり、オープンウォーター(OW),アドバンスド,レスキュー,ダイブマスター,インストラクターなどの種類があります。
上に行く程、取得するには、高いダイビングスキルと体力や泳力が必要になります。
先に書きましたように許可制ではありませんから、Cカードを取得せず潜っても違法ではありません。
ですが、自分自身と同伴者の安全のために、基本的な技術や知識は必要です。
さらに、例えばリゾート地のダイビングショップに行ってガイドを頼んだ場合、Cカードが無いと、ショップはその客のスキルレベルがわかりません。
どの難易度のダイビングスポットに連れて行ったらいいのか判断がつかないのです。
コミュニケーションが取りにくい外国人であれば、なおのことです。
ただし、私を含めて多くのダイバーは、最初のOWを取ったら、その上のランクのCカードを取ろうとしません。
特に不都合はありませんし、取得には時間と費用が掛かるからです。
したがって、同じOWであっても、取り立ての初心者から、数百本の経験があるベテランまで幅広いダイバーがいるので、やはり判断がつきません。
そこで、ダイビングの都度、スポットの状況や深度,時間等を記録し、一緒に潜った相手(バディ)のサインをもらった『ログブック』の提示を求めるショップもあります。
あるいは、一度潜るところを見れば判断できますから、近場で潜ってスキルを確認する『チェックダイブ』を行う場合も多いようです。
ちなみに、Cカードを取る場合、都市部だと海洋実習に行くのが大変ですが、沖縄などのリゾート地に行って現地のショップで受講すると、海がキレイで目の前なので楽だと思います。
講習が終れば、そのままレジャーダイブできますし。
ただ、夜は他の客が飲んだりして楽しんでいる中、学科を受講しなければなりませんが。
なお、水中で建設等の作業を行う『潜水士』は国家資格です。
ダイビングの機材
<エアボンベ>
これもよく『酸素タンク』や『酸素ボンベ』と言い方をします(テレビではほとんどの場合、このどちらかの呼び方をします)が、間違いです。
『酸化』というように、酸素は、生体や物質を変化させダメージを与えます。
水圧がかかる高圧下となるダイビングで純酸素を吸ったら命の危険さえあります。
自発呼吸が困難で血中酸素濃度が下がっている患者や超高地登山でない限り、純酸素を供給することはありません。
また『タンク』は、東京ガスのガスタンクのような大きな貯蔵施設のことを言います。
正しくは『ボンベ』です。
その形が似ている爆弾(BOM)に由来した名称です。
したがってダイビングで使うのは『空気ボンベ(エアボンベ)』です。
大気をコンプレッサーで充填したもので、『クウキ』または『空気』と大きくペイントしてあります。
なお、空気の酸素濃度は約20%で、残りのほとんどは窒素です。
<レギュレター>
このエアボンベは約200気圧の高い圧力ですから、それを低い圧力にして呼吸できるようにしたのがレギュレター(レギュ)です。
故障時やバディのトラブル用に予備のレギュを装備する場合があり、オクトパスと呼びます。(たこ足が由来です)
さらに、ボンベの空気の残りを表示する残圧計、深度計が付いています。
<BC(Buoyancy Control=浮力調整)>
水中では、深度やボンベの残圧などによって、ダイバーに掛かる浮力は常に変化しますから、自分の思った通りの深度や姿勢を維持するのは、高いスキルが必要になります。
しかし、ボンベとホースで繋ぎ、エアの出し入れができるBCがあると、初心者でも簡単に浮力調整ができますし、水面に浮上した際は、エアを充填すると楽に浮いている(浮力を確保する)ことができます。
ジャケットように着用し、そのハーネスにボンベを固定します。
現在では、着用率はほぼ100%と言っていいと思います。
<ウェットスーツ>
例えば20℃は、陸上では心地よい温度ですが、水中では熱伝導率が高いため体温がどんどん奪われてしまいますので、20℃の水中でウェットスーツを着ていないと、1時間も耐えられないと思います。
ウェットスーツは文字通り、中に少し水が入りますので、カラダは少し濡れます。
寒冷地のダイビングでは、水が入らない構造のドライスーツを着用します。
<ウエイト>
ウェットスーツは浮力があるので、そのままではダイバーは沈むことができません。
そこでその浮力を打ち消すために、ウエイト(おもり)を腰のベルトに着用します。
ウェットスーツのゴムの厚さによって異なりますが、一般的には体重10kgあたり1kgを装備します。
水中ではその重さを感じませんが、陸上では他の機材と合わせてかなりの重さになります。
そのため、船上で立ち上がるとフラついて危険ですので、船のヘリに腰掛け、前かがみでそのまま後ろに倒れ込むようにして水中に入る『バックロールエントリー』が一般的です。
また船に上がる際、装備を付けたままラダー(はしご)を上ろうとすると、浮力がある海面から、浮力0の海上に上がりますので、映画『ゼロ・グラビティ』のラストシーンのような『重力』を全身でズッシリと感じます。
<あとは>
マスク,海面で呼吸するためのシュノーケル,フィン(足ひれ),グローブ,ブーツ,ナイフ(サメと戦うためではなく、海藻や網等が絡まった時のためです)が必須の装備です。
<他には>
他には、コンパス,ダイビング時間を管理するための時計(ダイバーズウォッチ),深度や時間を自動的に記録するダイビングコンピュータ(ダイコン)も装備している人が多いようです。
ダイビングは、最大深度によって潜水時間や浮上速度及び休憩時間を計算する必要があります。
それを無視して、急速に浮上したり、短いインターバルで連続潜水したりすると、血中に泡が発生し(ビールや炭酸飲料のフタを開けた時のイメージです)それが毛細血管に詰まると体に障害が出ます。
これを減圧症といい、一般的には潜水病と言われています。
私は、ガイドと同じにしておけば問題ないと思ってますので、計算したことはありませんが。
ダイコンはそれらを管理し警告しますが、マージンが無く、ユーザー個々の体格、体質を考慮したものではないので、指示のギリギリでダイビングを続けると危険だと言う説もあります。
ボートダイビング
リゾート地でのダイビングは、宿泊地の近くの港からボートでスポットに行くボードダイビングがほとんどです。
ボートダイビングには2つのタイプがあります。
ひとつは、スポットに船を停めアンカー(いかり)で固定して、海に入り(エントリー)、周囲の海底を回って船に戻る方法です。
穏やかな海の場合、操船して来たスタッフもエントリーし、船が無人になることもあります。
もうひとつは、今回のバリ島のニュースに出てきた『ドリフト・ダイビング』です。
潮の流れが速いスポットの場合、船を固定すると、行きか帰りに流れに逆らって進む必要があります。
潮の速さにもよりますが、フィンを履いているとはいえ、装備の重さや水の抵抗がありますので、流れに逆らって進むのは容易ではなく、体力を消耗します。
そこで『上流』でエントリーし、流れに乗りながらスポットを楽しみ、『下流』に先回りした船に戻る方法がドリフトです。
潮の流れが速い場所の方が、大物のサカナに出会えたり、海底の形状がダイナミックなど、見応えがある人気スポットが多いようです。
流れに乗って移動しますから楽ですが、流れに逆らって無駄な動きをしないなどの経験が必要ですので、初心者には難しいと思います。
今回の事故は、ドリフト開始後に天候が急変し、船長がダイバーの浮上をロストしたのが原因のようです。
客5人に対しガイド2人は、充分な配置です。
海上が荒れても海中は無関係ですから、おそらく7人はデフォルトの浮上場所の海底に着き、固まって浮上したはずです。
しかし、船が来ない。
海面が少しでもウネると、海面にいる人間は波に隠れてしまいますので、発見は困難になります。
おそらく7人は離れないようにひとかたまりになって、漂流したのでしょう。
私も漂流経験が
私も以前沖縄で、プチ漂流したことがあります。
今回と同じように、ドリフト後に浮上しようとしたら、まだ上にボートが来ていません。
そのまま浮上し、そのうち来るだろうと思いましたが、ガイドは非常事態だと判断し、ボンベとBCを客(私を含めて3人)に預けて、助けを呼ぶために1km程先の陸地に向かって泳ぎ始めました。
ボートは、エントリーの際に打ったアンカーロープをスクリューに巻き込み壊してしまっていたのです。
海面はベタなぎで水温も高く、周りに島は多いし、まだ昼前で日没までたっぷり時間がありましたので、それほど不安は感じませんでした。
浮力を確保するために、ウエイトは捨て、もっとキツくなったらボンベとレギュも捨てよう思っていましたが、そうする前の、漂流から約1時間後に、動けなくなったボートからの連絡を受け捜索に来た他のボートに助けられました。
ドリフトに限らずボートダイビングにはこのようなリスクがありますから、漂流した時のための装備として、海上で目印となる細長いフロートやストロボライトを装備するの一般的ですが、私の漂流の時にはガイドも装備していませんでした。
最近では水深40m耐圧のiPhone専用ケースもありますので、装備すれば、心強いセーフティグッズとなるでしょう。
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