エボラ感染者を受け入れる日本の病院45ヶ所とは?
公開日:
経済・科学
感染拡大を続けるエボラ出血熱。
日本でいつ感染者が発生してもおかしくない状況です。
しかし、エボラ感染者を受け入れる医療機関は、全国に45ヶ所、92床しかありません。
危機が現実になった時、日本は対応できるのでしょうか。
※45ヶ所の医療施設一覧は文末に掲載しています。
患者1人に2人の看護師が二次感染
10月18日現在、エボラ出血熱は感染が更に拡大し、感染者数は約9200人、死亡者数は4555人に上っています。
また、医療従事者の感染者は424人、死亡者は239人となっており、アメリカで2人目の二次感染者が発生、フランスでも1名の二次感染、スペインでは三次感染者発生の可能性が報告されています。
WHOは、12月上旬には毎週1万人の感染者発生の恐れがあるとの警告。
春先に西アフリカで感染が広がり始めた頃、「専門家」は、コウモリや猿を食べる現地の食習慣や遺体に触れる葬儀の習慣が原因であり、空気感染しないので、高度な医療知識や設備のある先進国に感染者が入国しても二次感染の心配は無いと話していました。
しかし、その先進国の中でも最先端のアメリカで、第1号患者であるトーマス・エリック・ダンカン氏(既に死亡)1人に対し、2名の看護師が二次感染しました。
さらにスペインでは、二次感染の看護師を運んだ車両を介して三次感染者が発生した可能性があります。
防疫の最先端のアメリカで二次感染者が出た現実
欧米での二次感染は全て医療従事者で、防護服を脱ぐ際に手袋等に付着したエボラ菌に触れた等の、作業手順のミスだと言われています。
しかしアメリカは、CDC(疾病対策予防センター)という約16,000人の職員を有する連邦機関を持ち、その方針や発表はグローバルスタンダードになる程の感染症に関する最先端組織です。
またHIVが蔓延した1980年頃から、アメリカの医療機関では、ERなどの医療ドラマで描かれているように、治療の際には必ず手袋を着用し、患者の血液や体液が出る施術の際にはマスクやゴーグルなどの装着が徹底されています。
そんな国で、しかもエボラ感染者を収容するような最先端医療施設の従事者が感染してしまうのですから、エボラ防疫や感染防止の難易度の高さが分かります。
日本で受け入れる医療施設は全国で45ヶ所のみ
では日本はどうか?
潜伏期間の感染者は識別できませんから、入国は防げません。
日本のどこで第1号患者が発生してもおかしくない状況です。
その際、日本で感染者を受け入れる能力があるのは、特定感染症指定医療機関と第一種感染症指定医療機関の合計45ヶ所で、ベッド数は各2床前後の合計92床しかありません。(※45ヶ所の医療施設一覧は文末に掲載しています)
潜伏期間中の感染力は弱いと言われていますが、入国後に接触した多くの人たちも隔離する必要があることを考えると、とても足りません。
しかも、エボラのウィルスを取り扱えるBSL4(bio safety level)の施設は、日本では付近の住民の反対により運用されていないため簡易検査しかできず、ウィルスの詳細な検査や分析は海外のBSL4機関に検体を送らなければいけませんから、その分、対応に遅れが生じることになります。
受け入れの医療機関も実戦経験無し
また、指定医療機関だからといっても、エボラのような第一種感染症の実戦経験がある職員はほとんどいないでしょう。
治療はもちろんのこと、発生時の患者搬送や立ち回り先の滅菌など、充分な訓練を行なわないと欧米のように二次感染が発生してしまいます。
つい先日、対象施設の職員の講習会のニュースが流れていましたが、日本での患者発生に間に合うのでしょうか?
映画の世界でしかなかったエボラが、今そこにある危機となっています。
富士フィルムの抗ウィルス薬に効果が?
なお、現在、治療薬やワクチンはありませんが、富士フィルム傘下の富山化学工業が開発したインフルエンザ薬の「アビガン(Agivan)・一般名ファビピラビル(favipiravir)」が特効薬として期待されています。
マウス実験ではエボラに対する効果が確認されており、フランス人看護師に投与され、無事に回復しました。
しかし、同時に複数の新薬が投与されたので、アビガン(ファビピラビル)の効果だったのかどうかは確定していません。
現在、スペインとドイツの患者にも投与されています。
関連記事:エボラ出血熱 日本の治療薬・アビガン錠での治癒2例目か
エボラを受け入れる日本の45医療施設とベッド数一覧
↓特定感染症指定医療機関(3施設)
都道府県 | 医療機関名 | ベッド数 |
---|---|---|
千葉 | 成田赤十字病院 | 2 |
東京 | 独立行政法人国立国際医療研究センター病院 | 4 |
大阪 | りんくう総合医療センター | 2 |
↓第一種感染症指定医療機関(44施設・上との重複が2施設)
都道府県 | 医療機関名 | ベッド数 |
---|---|---|
北海道 | 市立札幌病院 | 2 |
岩手 | 盛岡市立病院 | 2 |
山形 | 山形県立中央病院 | 2 |
福島 | 福島県立医科大学附属病院 | 2 |
茨城 | JAとりで総合医療センター | 2 |
栃木 | 自治医科大学附属病院 | 1 |
群馬 | 群馬大学医学部附属病院 | 2 |
埼玉 | 埼玉医科大学病院 | 2 |
千葉 | 成田赤十字病院 | 1 |
東京 | 都立墨東病院 | 2 |
東京 | 都立駒込病院 | 2 |
東京 | 東京都保健医療公社荏原病院 | 2 |
神奈川 | 横浜市立市民病院 | 2 |
静岡 | 静岡市立静岡病院 | 2 |
山梨 | 山梨県立中央病院 | 2 |
新潟 | 新潟市民病院 | 2 |
富山 | 富山県立中央病院 | 2 |
福井 | 福井県立病院 | 2 |
長野 | 長野県立須坂病院 | 2 |
愛知 | 名古屋第二赤十字病院 | 2 |
三重 | 伊勢赤十字病院 | 2 |
岐阜 | 岐阜赤十字病院 | 2 |
滋賀 | 大津市民病院 | 2 |
京都 | 京都府立医科大学附属病院 | 2 |
大阪 | 大阪市立総合医療センター | 1 |
大阪 | 市立堺病院 | 1 |
大阪 | りんくう総合医療センター | 2 |
奈良 | 奈良県立医科大学附属病院 | 2 |
和歌山 | 日本赤十字社 和歌山医療センター | 2 |
兵庫 | 神戸市立医療センター中央市民病院 | 2 |
兵庫 | 兵庫県立加古川医療センター | 2 |
岡山 | 岡山大学病院 | 2 |
広島 | 国立大学法人広島大学病院 | 2 |
鳥取 | 鳥取県立厚生病院 | 2 |
島根 | 松江赤十字病院 | 2 |
山口 | 山口県立総合医療センター | 2 |
徳島 | 徳島大学病院 | 2 |
高知 | 高知医療センター | 2 |
福岡 | 福岡市立こども病院・感染症センター | 2 |
佐賀 | 佐賀県医療センター好生館 | 2 |
長崎 | 長崎大学病院 | 2 |
熊本 | 市立熊本市民病院 | 2 |
沖縄 | 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター | 2 |
沖縄 | 琉球大学医学部付属病院 | 2 |
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