燃料電池車トヨタMIRAI 水素の燃費はいくらになる?
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水素で発電するトヨタの燃料電池車MIRAI。
その水素は、先月のイワタニの1kg1100円に続いて、25日には日石が1kg1000円での販売を発表しました。
かなりの低価格ですが、ミライの実際の水素代は、いくらになるのか、詳しく計算しました。
トヨタの燃料電池車(FCV)ミライの納期は最長2年?!
12月15日に発売されたトヨタの燃料電池車(FCV)MIRAI。
年間生産400台の計画に対し、既に多くのバックオーダーを抱えており、最長で2年の納期になっているとのこと。
まだ量産ラインに乗っておらず、手作りの部分があるので、簡単には増産できないのでしょう。
しかし、工場の増設も計画されていますので、計画は前倒しで進むようです。
また、来年にはホンダも発売予定ですし、国の補助金額も大きい(ミライの場合で202万円)ので、購入検討の対象になる日も近いかもしれません。
日石が水素1kg1000円の低価格で販売
問題は、生活圏に水素ステーションがあるかどうかですが、こちらも日石やイワタニなどが前倒しで進めるようです。
そして、水素の価格についても、戦略的な低価格が設定されました。
先月、イワタニが1kg1100円(税別)を発表しましたが、25日にはJX日鉱日石エネルギーが1000円(税別)で販売することを発表しました。
ガス(気体)の容量の単位にkgを使うとは知りませんでした。
6月に書いた記事「トヨタ燃料電池車(FCV)市販決定 でも水素の価格は?」で、MIRAI の水素費用を試算した際、気体の容量の単位として一般的な立米(リュウベ・m3)を使いましたので、今回の1kg当たりの価格ではどうなるのかを計算し直しました。
なお、読売オンラインの記事では「ミライを満タンにした時の燃料代は4300円」となっていますが、それは間違いだと思います。
ミライの水素タンクの容量
・MIRAIは水素タンクを2個搭載しており、容積は2個合計で122.4L(リットル)で、これは常圧(1気圧)で122.4Lの水素が入るということです。
・タンクの使用圧力は70Mpa(メガパスカル)です。
1Mpaは、前回の記事「トヨタ燃料電池車(FCV)市販決定 でも水素の価格は?」では約10気圧で計算していますが、正確には10.197気圧(kgf/cm2)ですので、70Mpaのタンクは70×10.197=713.79気圧(kgf/cm2)ということになります。
タンク容積が122.4Lですから、
122.4L × 713.79気圧 = 87,367.896Lとなり、これは常圧に戻した場合に約87,368L分の水素を充填できるということです。
・気体の容量の単位は小さい順にCC→L→m3(立米)を使い、それぞれ1000倍になりますから、87,368Lは87.4m3(立米)です・・・ミライのタンクに入る水素総量
ミライの1km当たりの水素代金は?
今回の発売単位である水素1kgは、11.2m3(立米)です。
(参考:水素物性の基礎データの3.水素ガスと液体水素諸元換算表)
前述のようにミライのタンクには87.4m3(立米)の水素が入りますから、
87.4m3 ÷ 11.2m3 = 7.80kg・・・水素の購入量
日石の価格は、消費税込みだと1kg1,080円ですから、
7.80kg ×1080円 = 8,424円・・・水素の代金
ミライの航続距離はJC08モードで650kmなので、
8424円 ÷ 650km ≒ 13.0円 ・・・1kmあたりの水素の代金
イワタニの価格は、税込み1,188円ですから、
7.80kg × 1188円 = 9,266円
9266円 ÷ 650km ≒ 14.3円 ・・・1kmあたりの水素の代金
ミライはガソリン車と同等の燃料費に
ガソリン車と比較してみましょう。
私が入れてる所は税込み140円を切っているので、全国相場より少し安いかもしれませんが1L 140円で計算します。
ガソリン車の燃費を10〜15km/Lとすると、
140円 ÷ 10〜15km ≒ 14〜9.3円/km・・・1km当たりのガソリン代
今回の水素の価格設定で、ほぼガソリン車並みの燃料費になったと言っていいでしょう。
前記事「トヨタ燃料電池車(FCV)市販決定 でも水素の価格は?」では、1m3(立米)100円になるとガソリン車並みになると書きました。
1kg1080円〜1188円を、1m3(立米)に換算すると、
1080円〜1188円 ÷ 11.2m3 ≒ 96.4円〜106.1円ですから、早くもその価格を実現した事になります。
日石やイワタニの気合いの入り方が分かります。
今後、さらなる低価格化や水素ステーションの増設に期待しましょう。
※註
水素1kgの換算の正確な単位は、11.2Nm3(ノルマル立米またはノーマル立米と読みます)で、0℃、1気圧の状態を表します。
シャルルの法則で、気体は0℃から1℃上がるごとに1/273ずつ膨張します。
(同じ体積だと水素が薄くなる=質量が少なくなる)
実際には気温を計算に入れる必要がありますが、めんどうなので省略しました。
それ以外の計算間違いがありましたら、「お問い合わせ」欄からご指摘いただければ幸いです。
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Comment
論旨には同意出来ます。
ただ、高圧下における水素の密度計算が間違っています。70気圧下においてのガス体積は1気圧下の70倍にはなりません。0.1224m3の場合は54.1Nm3程度です。したがって燃費円/kmはもっと悪くなります。
イワタニ、日石の水素価格は妥当でしょうか。私のところの購入額はその1.5倍に近いです。
冷静に計算すれば、現状の環境下ではFCVは全く使い物になりません。WtoWのCO2排出量もEVに遙かに劣ります。補助金を付けるような話ではないと思いますね。
[…] 詳しい計算根拠は、こちらで見てください。 […]
それ以前に…
MIRAIは水素タンクを2個搭載しており、容積は2個合計で122.4L(リットル)で、これは常圧(1気圧)で122.4Lの水素が入るということです。
これ、70Mpaで122.4Lの水素が入る、の間違いでは?
間違いではありません。
高圧容器に入る気体の充填量は、容積×圧力で計算します。
詳しくは記事をご覧ください。
トヨタのMIRAIのHPを見ると、タンクに入る水素は約5.0kgであるとしていますね。これほどの高圧になると理想気体と実在気体のズレが無視できなくなりますから、そのせいでしょう。
http://www.tennoji-h.oku.ed.jp/tennoji/oka/2008/jituzaikitai.jpg
そして650km走るというのは、タンクが10Mpaの状態から満タン(70Mpa)にしたときに走る距離である、と書いてあります。
ある程度圧がないとうまく動かんので10Mpaで空ですって感じなのではないかと想像しますが、定かではありません。
おおざっぱに5.0kg*(60/70)=4.285kg で、キロ1000円で4300円という計算なのでしょう。
実際には10Mpaでは70Mpaより理想気体に近く、より
入りやすいわけでそこを考慮せんといかんですよね。
計算は省きますけどだいたい10Mpaでは1.03kg入ってるようです。
だから残り4kgが充填されるとしてキロ1000円だとすると4000円。消費税入れると4320円ですか。
税込みとすると4300円とする新聞も合ってそうですが、税率が変動することを考えると税別計算してるんじゃないかなと。
[…] 詳しい計算根拠は、こちらで見てください。 […]