国民投票の行方 そもそもギリシャはなぜ巨額の借金をした?
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海外
緊縮財政を受け入れるかどうかの国民投票が迫るギリシャ。
そもそも、なぜギリシャは返せない程の巨額の借金を抱えることになったのでしょうか。
前記事:とんでもギリシャ 定時出社手当? 公務員天国の呆れた待遇
ヨーロッパのルーツであるギリシャに甘いEU
ギリシャ神話の全能の神ゼウスがエウロパを連れて駆け巡った地域が、ヨーロッパの語源と言われています。
その他にもギリシャは、多くの都市国家を形成してヨーロッパ文明の起源となり、オリンピックや民主主義の発祥地でもあります。
さらにソクラテスやプラトン、アリストテレス等の哲学者、ピタゴラスやアルキメデスなどの数学者を輩出。
そのため、ヨーロッパ人の中でも、ギリシャは特別な位置付けでした。
1981年、ギリシャがEU(欧州連合)に加盟した時には、「我々の文明のルーツであるギリシャがやっと我々のもとに戻ってきた」と歓迎し、2001年のユーロ導入も、他国と比べると審査で優遇し、すんなりと認可されました。
ユーロ導入で借金しやすくなったギリシャ
ギリシャはそれまでの通貨「ドラクマ」の時代には信用度が低く、国債の金利は約17%と高利でしたが、ユーロになることで信用度が上がり、5%程度まで金利が下がり借りやすくなりました。
ギリシャは前記事で書いたように、税金徴収に努力せず、選挙の支援者をどんどん公務員にする等の放漫経営でお金が足りなくなったため、借金しまくりました。
ユーロにはGDPに対する借金比率が規定されていますが、ギリシャ政府は「粉飾決算」で隠蔽し続けます。
しかし2009年に政権交代したことでその粉飾が発覚し、借金の額は38超円にものぼることが分かりました。
他国に責任転嫁し、ケツをまくるチプラス首相
EUは、緊縮を実行することを条件に財政支援しました。
それを受け、これも前記事で書いたような緊縮財政を実施しましたが、EUに言われたシブシブでしたので実効性が低く、借金は43超円に膨らんでしまいました。
自己主張や自分たちは特別だという意識が強く、責任転嫁が得意なギリシャ国民は、今年の1月、反緊縮をぶち上げたチプラス政権を選び、チプラス首相は「貸した方が悪い」「無いものは返せない」とケツをまくります。
さらにチプラス首相は、ナチスの損害賠償として約38兆円を要求しますが、ドイツがそんな話しに応じるはずがなく一蹴。
そして、IMF(国際通貨基金)への返済金約2,200億円の期限である6月30日を前に、ECB(欧州中央銀行・ユーロ圏の中央銀行)がユーロの供給を制限し始めました。
そのため、ギリシャは手持ちのユーロが底をつき、銀行が通常営業を停止して、AMTの出金を1日約8,000円に制限しています。
口座振替ができない恐れがあるためクレジットカード会社は利用を停止したので、ギリシャ国民は、毎日ATMに並んで8,000円の現金を降ろすしか決済資金を手にする方法が無くなっています。
ギリシャ政府は、期間限定で、公共交通機関や高速道路、携帯電話料金を無料にしました。
ATMの出金制限をしているためという名目ですが、実際は国民のガス抜きが目的と言われています。
次々と迫る巨額な返済期限
6月30日のIMFへの約2,200億円は、当然ながら返済できず、先進国では初の「延滞国」になりました。
この後も、7月13日にIMF約600億円、7月20日にECB約4,800億円、7月末に日本向け「サムライ債」約177億円、8月20日にECB約4,400億円と、巨額な返済期限が立て続けにやってきます。
日本は直接の債権は少ないですが、IMFへの出資比率はアメリカに次いで2位の6.56%ですので、ギリシャがIMFからの借金約3兆4,000億円を踏み倒した(デフォルト)した場合、単純計算で2,230億円をカブることになります。
国民投票の世論調査は賛成がわずかに上回る
チプラス政権は、EUからの緊縮財政の要請を受け入れるかどうか、7月5日に国民投票を実施します。
YESが多数だった場合、チプラス首相は「国民自身が緊縮を選んだ」と責任逃れするでしょう。
しかし退陣は避けられないと思われます。
NOだった場合は、「緊縮拒否は国民の総意」だと勢いづくことになります。
チプラス首相は当然ながらNOを選ぶよう呼びかけており、NOが上になっているトンデモ投票用紙を用意しました。
直前の世論調査では、ATMが出金制限されたことで、財政破綻の重大性に少しは気付いたのか、賛成が僅かに上回っています。
ただ、ギリシャは本籍地で投票するというシステムのため、他都市に住んでいる人は本籍地に帰って投票しなければなりません。
しかし、移動する旅費(現金)が降ろせないので投票率が低下する可能性があります。
金を貸さないと中国やロシアに頼るぞ!
緊縮財政を拒否となった場合も、EUがギリシャを見放すとが限りません。
EUやユーロ離脱となると世界経済が大混乱しますし、ギリシャには中国とロシアが手を差し伸べています。
先に述べた歴史上の特殊性だけではなく、地政学上も重要な場所に位置していますので、ギリシャが中国やロシアについた場合、ヨーロッパの安全保障に重大な影響が及びます。
そのため、チプラス首相は「金を貸さないと中国やロシアに頼るぞ。それでもいいのか?!」と脅しを掛けています。
この厄介な国をどう扱うのか。
EUやIMFは決めかねているのでしょう。
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