サッポロ「極ZERO」は、なぜ国税に狙い撃ちされたのか?
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経済・科学
サッポロビールは20日、発泡酒として再発売する極ZERO(ゴクゼロ)の追加納税116億円を発表しました。
このため、2014年12月の最終予想利益の50億円は吹っ飛んでしまい、赤字転落となりそうです。
いったい極ゼロに何があったのでしょうか?
極ZERO 異例の販売中止と発泡酒への変更
サッポロは6月4日に、第3のビール(新ジャンルとも言います)の極ZEROの販売を中止し、7月に発泡酒として再発売することを発表していました。
今年1月、国税が酒税の適用区分を確認する目的で、極ZEROの製造方法の情報提供を要請してきたことが起因でした。
極ZEROは、サッポロ独自の新製法で、痛風の原因のプリン体や糖質をゼロにした業界唯一の商品です。
順調に売れ行きを伸ばし、同社にとって久々のヒット商品となりました。
私も去年から愛飲しており、6月4日の販売中止と発泡酒化の発表を聞き、すぐに買いだめに行きましたが既に店頭から消えていました。
冷蔵庫には、あと4本しか残っていません-_-;
新ジャンルの税額28円に対し、発泡酒は47円ですので、新しい極ZEROは、350ml1缶あたり19円程度の価格アップとなるでしょう。
ビール類の酒税とは?
そもそもビール類の税額(税率)は、どのような差があるのでしょうか?
簡単に言えば下の表ですが、単純に麦芽比率だけでは決められていません。
発泡酒は「麦芽使用比率25%未満」ですが、第3のビールは「発泡酒にスピリッツを加えたもの」(麦芽仕様比率50%未満の発泡酒かつ、大麦または小麦を原料とするスピリッツに限る)です。
う〜ん、よくわかりません。
しかも実際には、成分や製法についての「解釈」に幅があるようです。
ビール類の適用区分の決定方法
メーカーは新商品を発売するにあたり、どの適用区分になるか、成分表等の資料を添付して申告します。(税金は申告制ですからね)
しかし国税は、申告された成分等に食い違いが無いか、独自の検査部門で、克明に成分分析しています。
今回、その検査の結果、ゴクゼロは第3のビールに該当しないと判断し、サッポロに製法の照会をかけたのでしょう。
ビール会社は、国税の怖さを知っていますから、故意に成分をごまかすようなことをするはずがありません。
サッポロは驚き、自社で成分を洗い直しますが、やはり第3のビールとして問題ないとの結論しか出ません。
サッポロは、何度も国税にお伺いを立てますが、国税からの返答はありません。
日数が経つ程、国税が発泡酒として課税してきた時に、販売額(納税額)とその延滞税が膨らみます。
サッポロは、いつまでも停滞するよりはと苦渋の決断をし、ゴクゼロの販売停止と、それまで販売した分を発泡酒として再計算し、自ら追加納税することにしたわけです。
本来は価格に転嫁し、消費者が支払うべき発泡酒との差額をサッポロが負担し、116億円のまる損となりました。
発泡酒 国税との戦いの歴史
発泡酒という適用区分は以前から有り、麦芽比率は67%未満と規定されていました。
サントリーが1994年に、麦芽比率の低下による味への影響を原料や酵母,醸造技術で解決した、麦芽比率65%の発泡酒「ホップス」を発売し、翌1995年にはサッポロも参入する等、順調に市場を伸ばしました。
酒税は大口の税収源ですから、国税は発泡酒を目の敵にし、麦芽50%以上の発泡酒をビールと同じ税額に変更しました。
企業努力を無にする暴挙との非難があがりましたが、国税はそんなこと歯牙にもかけません。
しかしサントリーはさらに技術開発を重ね、麦芽比率25%の製品を発売し各社も追随。
その後も発泡酒市場は拡大しました。
そこで国税は、2003年に再度酒税法を改定し、今度は発泡酒の麦芽比率ではなく、税額そのものを上げました。
サッポロはなぜ国税に狙い撃ちされたのか?
国税が発泡酒の税額アップを果たしたその時に、サッポロがビールでも発泡酒でもなく、リキュール(発泡性)に分類されるため税額が安い「ドラフトワン」を発売しました。
サッポロが開発したこの第3のビールは、値上げになったことで縮小した発泡酒の市場を引き継ぐカタチで売上を伸ばします。
国税はコケにされたと怒り、サッポロに目にモノを見せてやる機会をうかがっていたのでしょう。
そこに、これまでにない新製法で、しかも売れている(税収が大きい)商品がサッポロから発売されました。
国税は、重箱のスミを突きまくって、極ZEROに何らかの「穴」を見つけたのでしょう。
国税がイヤラシイのは、その「穴」が何なのかを言わないことです。
極ZEROのどこがいけなかったのか分からないまま、サッポロは屈服し、巨額の特損を出しました。
また、国税がみつけた「穴」が分からないまま、今後の製品開発をしなければならないのは、サッポロはもちろん、他のビールメーカーの大きな足かせとなるでしょう。
他メーカーは、自社の既存製品が国税のターゲットにならないかということも戦々恐々だと思います。
検察特捜部と同じで、国税が立件すると決めたら逃げられないことを、ビール業界に知らしめる結果となりました。
それも国税の思惑だったのだと思います。
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酒類は生活にどうしても必要というわけではないので、一種の贅沢品とみなして税金をとるというのが酒税法。そもそもこれっておかしくない?であれば「ジュース」だって「どうしても必要なものではない」ので贅沢品になってしまう。そもそも一般感覚で酒類全般は贅沢品なんだろうか?感覚的に、違うと思う。また自分で酒を作れば「密造酒」になってしまうのもヘン。おそらくこんな法律を維持してるのは日本だけのはず。酒税がある国は日本以外にもあるけれど、自宅で酒を作ってはならないなんて国は日本だけだ。だってそもそも酒っていうのは自然発酵物なので、基本はパン作りと何ら変わらない。液体の糖類に(たとえ空気中のものでも)酵母がまざれば、酒なんか自ら意図せずとも勝手にできてしまうものなのだから。それにそもそも酒類区分ごとに税率が違うのも、おかしいというかヘン。現実を無視してる。たとえば海外に行けば、日本では(バーで注文でもしない限り)お目にかかれない様々なアルコールカクテル飲料が多く販売されています。なんで日本では販売されていないかって言うと、酒税法で区分できないものは販売しちゃいけないからなんだそうです。この延長でたとえば海外では「保存料にブランデーを使用している食品」が多くあるけれど、酒税法が理由で日本には輸入されないし、製造もできない。で、、やむなく身体に悪い人工保存料を食べさせられたりしてるのです、日本人は。つまり酒税法そのものが、時代にあわないのですよ。消費税を15%とかにするときに、無くしちゃってもよいのでは??と思います。