代々木ゼミの大リストラで分かった受験産業の大きな変化
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経済・科学
大手予備校の代々木ゼミナールが27校中20校の閉鎖という大リストラを発表したのには、驚きました。
かって受験産業を代表した巨大予備校が大転換を迎えたのは、少子化だけではない受験環境の大きな変化がありました。
しかし代ゼミは、このことを見越し、不動産ビジネスの準備をしていたようです。
(写真は、代々木ゼミナール本部校の代ゼミタワー・オベリスク)
全国20校を閉鎖し全国模試も廃止する代ゼミ
1957年に開業した大学受験予備校の代々木ゼミナール(代ゼミ)。
全国に規模の大きな27校を展開していますが、その内の20校を来春で閉鎖することを発表しました。
閉鎖される20校は、仙台,首都圏の10校(池袋,横浜,横浜アトリエ,立川,立川北口, 大宮,柏,津田沼,町田,湘南),高崎,浜松,京都,大阪,神戸,岡山,広島,小倉,熊本です。
存続されるのは、札幌,新潟,本部,造形,名古屋,大阪南,福岡の7校。
併せて、全国模試も廃止されます。
昨年もセンター試験受験者の約8割・約42万人が利用していましたので、偏差値データなどを活用した進路指導にも影響がでるでしょう。
さらに、大学入試センター試験の自己採点結果を集計分析するセンターリサーチも廃止されます。
高1、高2の生徒には、グループ進学塾を紹介する方針と、40歳以上の職員の希望退職の実施も発表されました。
生徒が殺到し全国展開した1990年代
代ゼミは、受験人口の増加を背景に、1980年から多校展開を開始し、多くの受験生を集客。
大規模な運動会を開催したり、武道館での入学式を行う等、ニュースにもよく取り上げられました。
有名講師(英語)だった金ピカ先生の佐藤忠志氏は、電話インタビューで、
「(佐藤講師の授業の申し込みに)生徒達が徹夜で並び、500人の定員が2時間で埋まり、全校もすぐに定員オーバーになった」と語っていました。
近年は浪人数が激減
しかし新規開校は、1992年の熊本校が最後になりました。
18歳人口は、1992年の205万人を境に、2001年は151万人、2014年は118万と6割を切る人数に減少。
また、長引く不況で大学進学にお金をかけなくなり、現役合格指向が高まりました。
さらに、文部省が片っ端から認可したため、大学数は1992年の523校から、2013年は782校に増えたため現役合格者数も増加。
その結果、1992年大学合格者の、現役:浪人は2:1でしたが、2013年には6:1と大きく変化しました。
浪人人口は、1991年は41.9万人でしたが、2013年には5.8万人と1割強にまで激減しています。
加えて、浪人するの場合も予備校に入学しない「宅浪」が増え、多数の浪人を対象としたビジネスモデルが成立しなくなっていました。
トレンドから外れた代々木ゼミ
さらに、代ゼミの特性が時流に合わなくなってきました。
3大予備校とは、代ゼミ、河合塾、駿台予備学校ですが、「講師の代ゼミ、机の河合、生徒の駿台」と呼ばれていました。
代ゼミは、前述のキンピカ先生や元暴走族の吉野敬介氏などの個性的な有名講師による、大きな教室での直接授業が特徴で、私立文系に特化していました。
対する河合塾は設備が良くて理系に強く、駿台予備学校は医学部等や国立理系に強いというのが定評です。
近年は、職業資格が取れる理系と学費が安い国公立大学の人気が高く、代ゼミはトレンドから外れてきました。
さらに、遠くの予備校まで通うのではなく、時間に縛られず何度も視聴可能な、東進ハイスクールの有名講師による授業映像の配信や、ブースによる個別授業が主流になっています。
予備校による子供の囲い込み
少子化に伴い、各予備校は、学習塾との提携等により、子供の頃からの囲い込みを進めています。
2006年、東進ハイスクールは中学受験の四谷大塚を買収し、
2008年、河合塾は中学受験の日能研と提携しましたが、
代ゼミは出遅れ、2010年になって中高受験のSAPIXを買収しました。
また、高校1年や高校2年の講座でも、河合塾に先行されてしまいました。
不動産ビジネスで安泰?
事業規模が一気に縮小する代ゼミですが、これまでの事業で稼いだ資金で多くの不動産を取得しました。
さらに、各校は駅前に立地し、オフィスビルなどに転用しやすい建物の設計で、当時から不動産ビジネスを見越していたとの話があります。
事実だとすれば、数十年先の人口動向を見据えた、慧眼(けいがん)の経営ですね。
ただ、受験生の生徒は、もともと来春以降も通うつもりはないでしょうからいいとして、リストラ対象となる講師は、転職先を探さなければいけませんから、地に足がついた指導や授業ができるのか心配です。
やはり、受験生にとっては、迷惑なリストラと言えるでしょう。
ひたひたとやって来る日本社会の縮小
少子化で、幼児,小学校,中学校と、それぞれの産業が縮小してきて、今度は受験産業が「構造不況」になりました。
次は定員割れの大学の倒産や、若い社会人のマーケットが廃るすることになります。
日本社会の縮小が着実に進んでいます。
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