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青色LEDでノーベル物理学賞 中村修二氏で思い出すこと

公開日: 経済・科学

この記事の所要時間: 45

フルカラーLED

ノーベル物理学賞に、日本人3人が選ばれました。

この中の1人、中村修二氏とは、以前勤めていた会社で取引がありましたので、その後の青色LEDの開発成功、勤務先の日亜化学との200億円の高額訴訟、いろいろな受賞のニュースなどで中村修二氏の名前が出るたびに思い出すことがあります。

 

青色LEDの実用化を評価

今年のノーベル物理学賞に選ばれたのは、赤崎勇名城大教授(85),天野浩名古屋大教授(54),中村修二カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)の3氏。

不可能とまでと言われていた青色LED(発光ダイオード)を発明・実用化し、「革命的」と評価されたものです。

基礎研究に与えられることが多いノーベル賞で、実用化された商品に関して受賞するのは珍しいことです。

それだけ、この青色LEDの評価が高いと言えるでしょう。

この実用化によって、赤色・緑色・青色という光の三原色のLEDが揃い、白を含め、フルカラーが可能になりました。

光の三原色
大型ディスプレイのフルカラー化,スマホ等のディスプレイのバックライト,信号機そしてブルーレイディスクのレーザーなど、身の回りの幅広い商品で応用されています。

屋内外の照明機器やイルミネーションで白色や電球色が可能になったのも、この青色LEDによるフルカラー化のおかげです。

LEDは、電気を直接「灯り」に変えるためエネルギー効率が良く、長寿命です(LEDそのものは半永久的ですが配線等で劣化で製品寿命があります)ので、信号機などの高所交換作業頻度が少ないという特長もあります。

また、小型の太陽光発電パネルと蓄電でも照明が可能になったので、電気のインフラが無い辺境の地でも灯りをともせるようになりました。

今回の受賞で、ノーベル賞の日本人受賞者は22人、その内、物理学賞は10人となりました。

 

中村修二氏の思い出

初めて中村修二氏の名前を聞いたのは、青色LEDが開発される前で、1991〜1992年頃だったと思います。

当日勤めていた産業機械メーカーの支店長会議で、大阪支店長の報告というか余談レベルの話しでした。

「徳島の日亜化学工業という聞いたことも無い会社の研究室から引き合いがあり、たまたま他の顧客のついでがあったので訪問。

少ない研究予算で小規模(はっきり言えばしょぼい設備)で、中村さんという担当者が1人で細々とやっている。

青色のLED製造のための(*)MOCVDを作りたいらしい。

青色のLEDが開発できれば、世界的な大発明になる。」

といった内容でした。

勤めていた会社は、取引先のほとんどが超大手メーカーばかりでしたが、時々、今回のような小さな会社の研究者や、大学の研究室から引き合いがありました。

しかし、たいていの場合、目指すモノの大きさに比べて予算が小さ過ぎ、商売になりませんでした。(相手にしませんでした)

話しを聞いた支店長達は、「開発できればだろ〜?」と、はっきり言ってせせら笑いました。

(*)MO-CVD
Metal Organic Chemical Vapor Deposition の略で、日本語で言うと(あまり言いませんが)有機金属化学気相成長法。
CVDは、ICやLEDなどの半導体デバイスの製造に欠かせない装置で、MO-CVDは有機金属を材料にする点が特徴です。

青色LEDの製造には、当時、誰も見向きもしなかった「窒化ガリウム」と、中村修二氏が考案した「ツーフローMOCVD」が不可欠です。

 

ほんとに青色LEDの実用化に成功

その後、1993年、ほんとに日亜化学が青色LEDの実用化に成功したというニュースを聞いて、驚きました。

大阪の支店長に電話して、結局当時は受注したのかを聞いたところ、安くしてあげて、納品したとのこと。

「青色LEDはワイが作ったようなもんや〜」と豪語してましたw

そして前述のように、青色LED技術は社会を変えたと言ってよく、ほんとうに世界的な大発明になりました。

日亜化学工業は急成長し、中村修二氏は退職して、カリフォルニア大学サンタバーバラ校・材料物性工学部の教授になりました。

 

驚きの高額訴訟

次に中村修二氏の名前を聞いたのは、日亜化学工業との高額訴訟でした。

青色LEDの実用化で中村修二氏が日亜化学から受け取った報奨金は2万円でした。

そのことを聞いたカリフォルニア大学の同僚らから呆れられ、slave(奴隷)nakamuraと言われたそうです。

そして日亜化学に対して、青色LEDに関する特許の正当な対価として200億円を支払うよう求めて訴訟を起こしました。

日亜化学工業は「特許は中村氏だけの努力で得られたわけではない」と主張しましたが、
東京地裁は、特許により2010年までに同社が1,208億円の「独占利益」を得、中村氏の貢献度を50%として、発明対価は604億円と算定。
中村氏側が請求していた200億円全額の支払いを認めました。

当時、「社員の発明の対価」のあり方が話題になり、企業が報奨制度を見直すきっかけとなりました。

日亜化学工業での中村修二氏の孤軍奮闘を聞いていましたので、青色LEDの実用化( ツーフローMOCVDの開発)は、中村氏個人の力であることは間違いありません。

中村氏がいなければ、決して日亜化学工業が青色LEDを実用化することは無かったと断言していいと思います。

一方、中村氏も日亜化学工業で比較的自由に研究できていたようですので、他の会社だったら開発できなかったかもしれません。

裁判所の貢献度50%は、妥当な数字だと思います。

しかしその後、「たったの」8億4000万円で和解が成立しました。
しかも、そのお金は寄付されたと聞いています。

そして、ついにノーベル賞。

あらためて、この上なく「世界的な大発明」だったんだなと、当時、私を含め支店長会議出席者がせせら笑ったあの日のことを思い出しました。

カリフォルニア大学ウェブサイト

中村修二カリフォルニア大教授

受賞理由

省エネで環境に優しい青色LEDを発明した。
従来に比べ、長寿妙でエネルギー効率が高い。多くの研究者が失敗する中で3人は成功した。
この発明は革命的で、20世紀は白熱電球が照らしたが、21世紀はLEDによって照らされる時代になるだろう。
LEDは地球の限りある資源の節約にも寄与した。
青色LEDは20年前の発明だが、白色光の実現に貢献しており、私たちは多大な恩恵を受けている。

関連記事:ノーベル賞授賞式と晩餐会 対照的な中村教授と天野教授夫妻

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Comment

  1. 違いますよ より:

    ツーフロー技術は、赤崎先生の成し遂げたことを別の方法でやっただけの技術で、量産化の技術は中村氏が研究発見したものじゃないんですけどね。

    高裁の裁判内容見ればわかると思うけど、中村氏はツーフロー技術開発した後は、講演などで世界を飛び回って、実際の実用化量産化の研究してたのは、他の若手社員なんだけどね。。。

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